この2021年10月19日版レポートは、2021/10に行われたTPAC 2021内のW3C 諮問委員会オンライン総会(W3C 会員限定ページ)向けに用意されました。前回のバージョンは2021/04版活動概要(英語版、日本語版)になります。このレポートの更新版は最新版をご参照ください。(訳注: 一般向けに原版にはない説明のリンクや追記を入れている部分があります。)
全世界的パンデミック状態の影響が社会で続く中、ウェブとW3C標準の利用が拡大しています。移動や物理的接触が制約される中、全世界にとってウェブがなくてはならない重要な技術基盤となっています。オンライン通販、家庭での学習、遠隔診療、新しい方式でのビジネス運営、娯楽、そして家族や友人とつながり続けるためなどに利用されています。
さまざまな企業がウェブ技術を拡張する必要性をもってW3Cに加入してきています。この中には、バーチャルに移行するために直接利用される技術や、プライバシーやウェブの非集権化をより進めるための課題など社会変革に必要とされる技術もあります。
ウェブの未来を作るというW3Cの活動が、公衆保健上の緊急事態に世界が直面している中での挑戦や次に来るべき解決策の提供に対して必須のものであったことを誇りに考えます。
このレポートは、ウェブ基盤を拡張しその発展と強みを広げる活動のまとめであり、科学的な協働や発見を加速しつづける、家族・友人をつなぐ場になる、オンラインで学習し技術を高める手段になる、活発なビジネスを行う、などのツールとなり続けるための活動のまとめです。
42個のワーキンググループと10個のインタレストグループの活動によるW3Cのウェブ標準の策定や、ガイドライン・解説文書の作成により、その使命を遂行しています。
全体で299個の仕様にわたる多くの活動は、GitHub上のワークスペースにおいて全体を通して均質で良質な監視と管理の元で行われています。W3Cの勧告やW3Cが公開するその他の種類の文書は全ての標準と草案のページにリストされています。
W3Cでは将来のウェブ標準についての議論のためにさまざまな方策を取っています。会員内での議論、他の標準化団体との連携、360を超えるコミュニティグループの数千を超える参加者の活動、そしてW3Cワークショップの開催などです。 その中でたくさんのよいアイデアが出ています。W3C戦略チームでは将来の標準化に向けた領域の探索や、参加者の募集を行っています。
W3Cワークショップの開催において、新領域についてのプレゼンテーション・パネル・分科会、そして仮想的な"廊下"会合を行うことにより、コミュニティ形成に繋がります。バーチャル移行に伴い活動形態の変更や予定変更が発生しましたが、分散会合になることでよりアクセシブルかつ全世界から参加しやすくなっています。この7月に全てのW3Cワークショップについて、事前録画のプレゼンテーションにおける英語字幕、ライブセッションにおけるリアルタイムの文字起こし、事前要望によるASLやその他の手話の提供といった、標準的な合理的配慮を実施することを発表しました。
直近に開催されたW3Cワークショップ:
"Strategy Funnel"はスタッフによる新領域の可能性の探索について示しており、インキュベーションと評価から、新規標準化グループの設立までを俯瞰することができます。GitHub プロジェクトでの漏斗(Funnel)表示では新規領域についての議論が"カード"として並び、通常は左から右へカラムの間を進んでいきます。ほとんどのカードは探索から始まり、設立や漏斗の外へ移動していきます。
特にインキュベーションが始まったものについて、一般からの情報提供はどの段階でも歓迎です。それによりW3Cがどの領域を標準化するに値するかを判断する助けになり、その領域の環境についての評価や、標準化作業に参加する団体の特定や、実情に合った内容で設立趣意書を作成することにも役立ちます。継続的なフィードバックは標準化作業全体の高速化に寄与します。
🎥 Daniel Clark、Mason Freed、Dave RupertによるOpen UIコミュニティーグループでのウェブUIの開発者・ユーザ体験を改善するための活動の紹介ビデオOpen UI - A year in review(2021/10版、4分)をご覧ください。このビデオでは、<select>要素のドロップダウンへの機能追加や、新しい<popup>要素の提案、そしてタブUIについての標準化の議論を紹介しています。
W3Cのウェブペイメント標準により事業者にとってフロント・開発共に低コストかつウェブ上どこでも同じとなる、統合された決済のユーザ体験を実現します。ユーザは情報を保存・再利用可能になり、オンライン決済をより速く正確に完了できるようになります。
Secure Payment ConfirmationがWeb PaymentsワーキンググループとWeb Payment Securityインタレストグループの注力分野であることは変わっていません。Stripeによる3月の勇気づけられる調査結果では、ユーザが8%多く決済を行い、ワンタイムパスワード方式よりも認証が3倍速く、詐取は無視できる程度と示されました:
W3C会員のAirbnbとAdyenはSPCを利用した試験を行うことを決定しており、またStripeも2回目の試験を予定しています。
10月にEMVCoがSPCをEMV® 3-D Secureプロトコルのバージョン2.3で利用可能とすると発表しており、ウェブでのカード決済のエンドツーエンドの相互可用性とセキュリティーを向上させる助けになるでしょう。
プライバシー・国際化のレビュー結果を受けていくつかの機能の削除ののち、Payment Request API 1.0が勧告案となりました。この仕様とPayment Method Identifiersは2021年中に勧告化する予定になっています。
W3C Merchantコミュニティーグループ(旧ビジネスグループ)では、新たなウェブ技術がどのように課題解決につながるか、どのような追加のウェブ技術が必要なのか、といった商業に関連した課題についての議論を年4回開催している非技術フォーラムです。
ウェブは世界共有の出版プラットフォームです。出版がウェブから受ける影響はより大きくなっており、またウェブが出版に与える寄与もより大きくなっています。Publishing@W3C(仕様公開マイルストーン)において特に興味を持たれているものは、体裁とレイアウト、アクセシビリティ、可用性、可搬性、流通、保管、オフラインアクセス、オンデマンド印刷、そして信頼性のある相互参照性です。また、グループには幅広い出版コミュニティが参加しており、旧来の"商業"出版社、ebookシステム開発者に加え、オーディオブックの出版社、論文誌や教育出版、司書研究者やブラウザ開発者も入っています。
EPUB 3ワーキンググループは、EPUB 3仕様の保守、開発と明確化の活動、W3Cの中でのEPUBコミュニティの代弁、そしてEPUB 3を利用したコンテンツ作成者・消費者へのサポートのために活動しています。グループの重要な活動成果としてEPUB出版物と表示システムの相互運用性の増強があります。
このグループでは、技術的要件を変更せずに仕様書の改良とより読みやすくする活動をしています: EPUB 3.3(EPUB出版物を作成する側の要求)、EPUB 3.3 Reading Systems、とEPUB Accessibility 1.1(後者2つは適合要求)
いくつかのワーキンググループノートの中でも、EPUB Accessibility EU Accessibility Act Mappingがデジタル出版会社にとってもっとも重要で、European Union (EU)指令のEuropean Accessibility Act (EAA)に関して、アクセシビリティ要求への適合を示すものです。EAAの各国での法制化は2022年6月までとされており、2025年6月までには適用開始となります。
Audiobooksワーキンググループ(以前のPublishingワーキンググループ)は作業を完了し、オーディオブック関連仕様のメンテナンスを目的に憲章を再策定しました。(Publications Manifest、Audiobook profile for a Web Publication、Lightweight Packaging Formatの3仕様)
Publishingビジネスグループでは、コミュニティーとともに、フォーラムとして議論することを通じ、作業が必要な新領域やウェブにおける出版全般でのビジネス要求を探索しています。
このグループではEPUBCheckの開発も担当しています。
メディアとエンターテイメントの活動(英語版のロードマップ:Roadmap: Overview of Media Technologies for the Web)ではメディアに関連した機能や没入体験を作り出すのに必要な機能の標準化に取り組んでいます。HTML5、TTMLとTTMLのプロファイル、WebVTTによりウェブに標準的な音声・ビデオ・字幕機能をもたらし、世界中にメディア処理とメディア体験の革命をもたらし、ウェブをメディアコンテンツを届けるための成熟したプラットフォームとしました。
ウェブはモバイルでもオープンなプラットフォームです。音声通信サービスとネットワーク設備の事業者は長らくウェブ技術の展開において重要な位置に居ました。ウェブプラットフォームの発展に伴いより豊富な機能を持つことで、新しいユーザやデバイスに対しても既存サービスを、そしてより拡張された機能を提供できるようになり、新規や革新的なサービスの提案に繋がっています。
2021年1月にWebRTCが勧告化となり、COVID-19のパンデミックの中で特に影響がある、ウェブブラウザの中で実時間の音声・ビデオ通信を可能にする相互可用性のある機能が実現しました。
WebRTCワーキンググループは関連する仕様であるMedia Capture and StreamsとScreen Captureを勧告化する作業に移行し、また完全なエンドツーエンド暗号化による通信をブラウザで実現するためのWebRTC Encoded TransformというWebRTCの新しいユースケースに関する技術提案について検討しています。
2020年9月に設立され、IETFのWEBTRANSワーキンググループと連携して活動中のWebTransportワーキンググループでは、WebRTC APIでの実装からでた低レベルのネットワーク機能を利用可能とし、より広い活用を可能とし、特に完全なクライアント・サーバ型通信の際に簡単に実現可能にします。ワーキンググループはWebTransport APIのFPWDを公開しました。
🎥 Will LawによるWebTransportワーキンググループのアップデートについてのビデオトークもご覧ください(2021年10月、12分)
Web & Networksインタレストグループは2021年4月に憲章を更新し、ウェブプラットフォームにおけるエッジコンピューティングの重要性について活動するとともに、ネットワーク品質のモニターと推定をウェブブラウザで実行する方法を追及しています。後者は特定のネットワーク状況を補足・模倣可能にする追跡形式の標準化についてになります。
Media and Entertainmentインタレストグループと共同で、Multicastコミュニティグループを設立し、WebRTCが実時間通信で行っているのと同様な、ウェブブラウザでマルチキャストによる伝送をどのように利用可能かについて検証しています。
🎥 Jake Hollandによる新しいMulticastコミュニティーグループの紹介とどうしてマルチキャストが重要でウェブで実現するためにどういう機構が必要かについての、Multicast for the Web(2021年10月、3分)のビデオもご覧ください。
運送に係る共有データの活用は、より強力な情報・娯楽・効率化・保守・安全や利便性の提供につながるなど、ユーザ体験が非常に向上する可能性があります。並行して、センサー・通信・クラウドやデータ処理基盤・地理情報・機械学習・モバイル環境・ユーザ環境や関連分野の拡充により、価値を創造する大きな機会が生まれています。自動車や運送分野でのこれらの発展により、コネクテッドカー・輸送方式やそれらの関連分野において標準化の必要性が生まれています。
W3C Automotiveワーキンググループは最初の Vehicle Information Service Specification (VISS)仕様に関する実社会での経験を積み重ね続けており、その第2版のFPWDが最近公開になりました。
「ヘッドユニット」で動作する車両のための高機能エコシステムを目指して提示する標準では、エンジン温度、燃料・充電レベル、走行距離、タイヤ圧などの車両のすべての情報を共通して扱う方法を提供します。すでに千項目程度ありますが、電動化や自立型・ドライバー補助技術などの拡張により増大中です。
VISS第2版はWebSocketに加えてHTTP RESTを含み、アドレスアクセス制御と強固な認証モデルが採用されました。このバージョンではデータフィード購読も改善されています。参照実装は車両業界で利用されているMQTTプロトコルも利用可能となるように開発中です。
Automotive and Transportationビジネスグループでは幅広い運輸系データの領域との連携や将来の標準化分野の開拓を含めた、Automotiveワーキンググループの標準開発継続に向けた役割を果たしていきます。また、ISO JTC1 WG11スマートシティのデータアーキテクトとも一緒に活動しています。最近の活動領域は :
W3CのWeb of Thingsは、分断された技術スタックの橋渡しを行い、デバイス間連携や大規模運用を可能にするために設計され、分断されたInternet of Thingsのさらなる可能性の実現や相互運用性を提供します。Web of Thingsにより既存のIoTエコシステムに対し提供者のコストとリスクが削減可能となり、複数のデバイスや情報サービスを組み合わせたアプリケーションにより付加価値を提供します。スマートホーム、スマートシティ、工場、農業、健康サービスなど、様々な領域に価値をもたらします。Web of Things (WoT)標準化活動を紹介するビデオ集もあります。
Web of Thingsワーキンググループは2020年に初版のWeb of Things標準を完成させ、相互可用性のプロファイル、検出、ライフサイクル・導入、ID管理について活動する目的の憲章更新を行いました。
関連のWeb of Thingsインタレストグループではステークホルダーを集め、外部の標準化団体や業界団体とも連携しながら、標準化に至る前のアイデアの探索を行っています。グループではWeb of Thingsについての共通認識の構築を行い、またW3Cの標準化作業を行う領域を探索しています。
Improving Web Advertisingビジネスグループはオンライン広告がどのようにすれば効果的かつプライバシー配慮したものになるかについて、ビジネスの側面から業種を超えて議論するフォーラムとして活動しています。
このグループではウェブ自体の標準や更新により、ユーザ、広告主、出版社、販社、広告ネットワーク、代理店などのエコシステムや体験を改善できる領域がないかを探索しています。また、既存のワーキンググループとの連携や、必要であれば新規ワーキンググループの形成も視野に入れています。
このグループでは、重要となっているプライバシー保護下でのウェブ広告のユースケースに合致できるように、アイデアと提案の更新や展開を考えています。
グループのダッシュボードではさまざまな議論や提案についてのレポジトリをまたいでの追跡を見ることができます。
Web Audioワーキンググループはオープンウェブプラットフォームに高度な音声・音楽合成機能を追加します。
Web Audio 1.0はすでにすべてのブラウザで実装されており、ブラウザでの統合音声を実現します。音声操作は、モジュール化された音声操作要素をつなぐ形の、音声ノードにより行われます。異なるチャネルレイアウトを含む複数音源もサポートされます。モジュールデザインにより動的にはたらく複雑な音声機能の作成に自由度がもたらされました。
6月にWeb Audio API 1.0が勧告となり、ウェブプラットフォームにウェブブラウザ上で協調的かつ対話的に音楽を操作し、音声を生成するための標準が追加されました。
Web Audioはすでに様々なアプリケーションで利用されています:SoundCloud、Mozilla Hubs、Firefox Mixed Reality、Ableton、Google Meet and Stadia、SoundTrap、Amped Studio、BandLab、BeatPort、Soundation、Leimma & Apotome、Spotify
Web Audioコミュニティーグループとの共同で第2版の作業が開始されています。この版は第1版を基礎として拡張する形で策定され、より複雑かつよく要望される機能が追加されます。
Browser Testing and Toolsワーキンググループは、ブラウザで動作するウェブアプリケーションを異なるブラウザ間の違いを超えて自動的に試験することを主目標に、ウェブブラウザの自動操作を行う技術を策定することを目的としています。
WebDriverが2018年にW3C勧告となり、HTTPベースのプロトコルにより、ウェブサイトでのユーザ操作のシミュレート、スクリプトの実行、エンドツーエンドの試験の実現、さまざまなプログラミング言語によるテストを実現しています。
自動化ツールが特定のブラウザに密接に紐づいている場合、開発者は高度な機能のためにそれに依存するか、複数ブラウザで動作するようにするかを選択しなければならなくなりますが、これはオープンウェブにとっては問題です。このグループではWebDriverの第2版を、ブラウザ自動化のエコシステムを標準化されたウェブのために開発しています。この版ではブラウザ内で発生する内部状態の観察を開発者ツールと同等になるまで可能とし、現代的なウェブアプリケーションにおけるネットワーク通信を行うなどのスクリプトを利用するなどによる非決定論的な動作に対応することを目標としています。
また、より低レベルプロトコルのWebDriver BiDiを、コマンドへの応答としてのみでなく、自動化ツールへ直接イベントを送信可能にするために開発中です。
🎥 James Grahamによるbrowser testing and toolsワーキンググループについての更新情報のビデオもご覧ください。(2021年10月、11分)
CSSはオープンウェブプラットフォームの重要な要素です。CSSワーキンググループはより良いページ組のサポートと高度なフォントの取り扱いについての要求を取りまとめるとともに、高度(かつ高速!な)スクロールとアニメーションについても活動しています。CSSは100を超える仕様の集大成で、それぞれが‘モジュール’として認識されています。CSSの現状は年1回更新されるスナップショットとして提供されます。このグループではCSS仕様のすべての定義についての索引も提供しています。
前回のこの報告から、1つのW3C勧告と5つの勧告候補を公表しました。100を超える編集者草案を抱えることから、CSSワーキンググループは頻繁に仕様書の公開を行っています。
🎥 カスケードレイヤーとコンテナクエリ・スコープがどのようにCSSアーキテクチャを改善するかについて、Miriam Suzanneによる概説とデモの短いビデオ(6分)と、CSSのネストについてAdam Argyleによるライブコーディングのビデオ(3分)をご覧ください。
Dataset Exchangeワーキンググループは、相互可用性があり再利用可能なデータアセットのカタログであるData Catalog Vocabulary (DCAT)と、ウェブ上でデータを要求・提供する際に有用なContent Negotiation by Profileの仕様を維持・開発する目的で設立されました。
現在、DCATの第3版を開発中で、昨日を追加しています。仕様はEverGreen形式でユーザ要求を実現できる機能を常に追加していく方式となりました。
🎥 Peter WinstanleyによるDataset Exchangeワーキンググループの現況紹介ビデオ(2021年10月、6分)もご覧ください。
Decentralized Identifierワーキンググループでは、容易に作成でき、非集権的、永続的、検証可能な暗号論的に検証されるデジタルIDを策定しています。Decentralized Identifiers (DIDs)は、対象の状態をどの利用者にも暗号論的に検証可能な情報を含むDID文書が紐づけられた特定のURIスキーマにより定義され、(ウェブサイトなどの)サービスに関しての対象についてのプライベート情報を交換可能とします。DID文書は各種の形式で保存可能な概念データモデルにより規定され、さまざまな形式の分散型台帳やウェブストレージに保管可能となっています。
DID Identifiers v1.0が勧告候補として公開中となっており、ウェブ標準として公開される直前のW3C会員による最終レビュー中です。グループは仕様の維持を目的に憲章を再策定する予定です。
Devices and Sensorsワーキンググループは、デバイスのデータを利用するウェブアプリケーション開発を実現可能にする、安全でプライバシー配慮がなされたクライアント側APIを提供するために活動しています。
2020年末に憲章を更新したのち、Screen Fold APIのFPWDを公開し(その後"Device Posture API"に改名)、憲章の活動対象の仕様リストに"Contact Picker API"を追加しました。
Web Editingワーキンググループでは既存のウェブブラウザの機能での制限を調査し、新規APIに向けたユースケースを提供し、文章編集に関する既存の動作の標準化や新規APIを導入することを目的としています。最終的にはJavaScriptによる小規模なエディタと同時に、高機能な編集機構を作成可能とすることを目標としています。
今年初めにW3Cでワーキンググループが活動開始して以降、これまで7年以上にわたって継続されてきた、文章編集に関連する機能の標準化が行われています。
バーチャルキーボード(VK)の表示制御をより高度に行い、バーチャルキーボードの表示状態が変更されたときによりあったウェブページのレイアウト変更を行えるようにする、VirtualKeyboard APIのFPWDをこの8月に公開しました。
文字入力をDOMと切り離し、ユーザ入力を処理しつつDOMの完全な制御が可能なウェブベースの編集を実現するための新しいAPIであるEditContentについても活動中です。
🎥 Johannes Wilm、Alex Keng、Anupam SnigdhaによるバーチャルキーボードAPIのデモもあるWeb Editingワーキンググループの状況についてのビデオ(2021年10月、6分)もご覧ください。
ウェブフォントは、中国語・日本語・韓国語といったフォント全体をダウンロードすることが重い言語や、アラビア語・インド諸語などのサブセット化されたウェブフォントでは頻繁に正しく表示されないような言語においても利用されます。Web Fontsワーキンググループではウェブでの相互運用性のあるダウンロード可能なフォントの仕様を開発しており、Progressive Font Enrichment (PFE)に注力するとともにWOFF仕様のメンテナンスを行っています。
Web Fontsワーキンググループは、実際に必要とされるフォントの一部分のみを転送可能にし読み込み速度の改善とデータ転送量の削減を可能にするIncremental Font TransferのFPWDを公開しました。フォントを複数リクエストにより読み込むことも可能で、毎回異なるデータを追記していくことになります。
この策定作業はevaluation report for progressive font enrichmentを元にしたもので、(CJKのような)ファイルサイズが大きくウェブフォントの利用が難しい言語のグループなどについて、低速ネットワーク、巨大サイズや言語の構造から複雑なサブセット化が必須となるフォントについての解決策を評価していました。
HTMLはワールドワイドウェブ(WWW)にとって核となるマークアップ言語で、ウェブサイトを構築するための基礎となる技術です。もともとHTMLは意味論的に記述された科学文書のための言語として設計されましたが、その一般的なデザインにより広く利用可能となっており、長年が経つうちにさまざまな文書やアプリケーションにまでも利用されるようになりました。
HTMLワーキンググループにて追跡されているW3Cコミュニティーによる指摘を考慮しつつ、W3C会員はHTML仕様のスナップショットを1月に勧告と承認し、プラットフォーム独立のイベントモデルや中断方法、ノードツリーを定義するDOMのスナップショットについても同様に承認する予定です。
グループでは2021年から2023年分の憲章の更新について活動中です。毎年HTMLとDOMのスナップショットを勧告化するという目標を維持し、グローバルコミュニティーからの要望をどう取り込むかや、アクセシビリティ・国際化・プライバシーなどといった領域に関して改善しつつ、より高度な相互可用性・性能・安全性を目指して活きます。
ブラウザでの効率的な機械学習を実現し、クラウド連携とは異なりプライバシー考慮で、仮想環境での物体検知などの低レーテンシーが必要な手元での処理を実現かつ、プラットフォームやハードウェアの機能を利用可能にします。
Web Machine Learningコミュニティーグループでの2年間のインキュベーションを経て、2021年4月にWeb Machine Learningワーキンググループが開始しました。コミュニティーグループは要求のとりまとめや仕様の初期開発を継続しています。
Web Neural Network APIのFPWDが6月に公開となり、草案は継続して更新されています。また、Web Neural Network API Explainerも公開されています。
🎥 Wanming LinによるWeb Neural Network APIのパフォーマンス比較のビデオもご覧ください(2021年10月、2分)。
MathMLは、数式をウェブで普通に扱えるようにすることで、数学や科学文書をきちんと表示でき、障碍を持つ方向けにアクセシブルにし、検索可能にするという、ウェブの基本部分の仕様の一つです。
2021年4月に設立されたMathワーキンググループではモダンウェブプラットフォームにあわせてMathMLを更新しようとしています。
MathML 4は過去のバージョン(MathML 1は1999年に標準化、MathML 2は2001年に勧告化、2003年に第2版が公開、MathML 3は2010年に勧告化、2014年に第2版が公開)を元に策定されており、アクセシビリティ面からの要請や、長年の利用による経験を元に更新されています。
この8月にMathML CoreのFPWDを公開し、草案として更新しています。この仕様ではMathMLのコアサブセットを規定しており、ブラウザが実装するのによい塊となっています。
ミニアプリは、小さなインストール不要で読み込みが早いウェブ技術(特にCSSとJavaScript)を利用していてネイティブアプリの機能を活用できるハイブリッド型モバイルアプリです。
MiniAppsワーキンググループはMiniApp LifecycleとMiniApp ManifestのFPWDを公開し、またMiniApp Packagingについても近く公開予定です。
重要な変更としてMiniApp URI Schemeについてhttp/httpsを利用する形で書き換えました。
関連するMiniApps Ecosystemコミュニティーグループでは、IoT向けMiniappやMiniapp Common UI Componentsといった新しい提案の検討を行っています。
Web Applicationsワーキンググループはクライアント側でのウェブアプリケーションを開発するのに必要とされる仕様を開発しています。
8月にARIA in HTMLのCRDを更新し、3月にIndexed Database API 3.0のFPWDを公開しています。
🎥 Marcos Caceresによるグループがウェブアプリケーションをより連携した環境で構築できるようになるためどのように仕様開発を行っているかについてのWeb Applicationsワーキンググループのビデオとデモ(2021年10月、2分)をご覧ください。また、Diego GonzálezによるPWAをデスクトップアプリケーションへ統合するためのtipsのビデオもあります(2021年10月、13分)
WebAssembly 1.0勧告仕様は、ネイティブに近い速度・最適化された読み込み時間を実現し、またもっとも重要な点として既存コードベースからコンパイル可能でもある、ブラウザとスタンドアローン環境で広く利用されている仮想マシンと実行環境を定義しています。
WebAssemblyワーキンググループは、関連して最終の仕様に至るまでの提案について検討しているWebAssemblyコミュニティーグループとともに、性能改善、ハードウェア機能を利用可能にする、言語機能のより効率的な利用、コンパイル型言語とJavaScript・ウェブとの連携の改善など、ウェブ標準へ新しい機能を追加する活動を行っています。
🎥 共同議長であるDerek SchuffとLuke WagnerによるWebAssemblyのコミュニティーグループ・ワーキンググループの更新情報のビデオ(2021年10月、12分)もご覧ください。
2001年設立のW3C Technical Architecture Group (TAG)は、ウェブアーキテクチャの管理人として特別に立ち上げられたワーキンググループです。このグループの目的は次になります:
TAGに選出されたメンバーはその組織を代表するのでなく、個人資格での参加となります。TAGのメンバーは特定のネットワーク・技術・ベンダー・ユーザ向けではなく、ウェブにとって何が最適かを元に判断を下します。
このグループは次の3項目を軸に運営されています:水平レビューグループの一つとしてウェブアーキテクチャの更新を行う他のW3Cのグループを助けるためにグループからの文書をレビューする、知見を公開する(Ethical Web PrinciplesやUnsanctioned Web Trackingなど)、ガイドラインを策定する(文書レビュー前の自己確認項目集である基礎的なSelf-Review Questionnaire: Security and Privacyや、Web Platform Design Principlesなど)
TAGでは最近Ethical Web Principlesについて、害のあるパターンやサステナビリティ―に向けた文章の更新のためのいくつかの変更を行いました。
新しい原則の項目がWeb Platform Design Principlesに追加になりました:DOMHighResTimeStampの利用、factory methodsとconstructors、ハードウェア・デバイス機能に対して設計するAPIについて
🎥 2020年のビデオですが今でも有効なW3C Technical Architecture Group (TAG)のアップデート:ウェブの原則について(2020年10月、13分)のビデオと、2021年10月のTAG updateのポストをご覧ください。
TAGはSecurity & Privacy QuestionnaireとWeb Platform Design Principlesの両方に、「現在開かれていないページ」に関する項目を追加しました。
プライバシーとセキュリティ - 人権と自由権に不可欠なもの - は W3C の活動において長らく重要とされてきています。例えば、認証技術の開発により弱いパスワードやフィッシングなどの攻撃の脅威を減らすことによるウェブセキュリティの改善などが上げられます。
しかしながら、ブラウザフィンガープリンティング、偽情報の拡散、や他のオンラインの脅威も含む、個人データの不正利用やオンラインでのトラッキングなどが問題となってきています。これらは緊急かつ難しい問題です。ユーザが検閲なしに安全に利用可能なウェブを手助けするための議論が始まっています。
Privacyコミュニティーグループではプライバシー重視の新しい仕様とAPIの検討を行い、また活気のある参加者とともに毎月の会議を開催しています。最近の活動内容として:
Web AuthenticationワーキンググループはWebAuthn Level 2をW3C勧告として公開し、4月にWeb Authentication Level 3のFPWDを公開しました。このグループでは、デバイス紛失からの復旧や他のAPIの拡張を含めた新しい憲章を策定中です。
関連のWebAuthn Adoptionコミュニティーグループでは開発者がWebAuthnの利用を避ける項目についての調査や、開発者とユーザが相互可用性のあるセキュリティーをより利用しやすくなるように助ける活動を行っています。
🎥 Nick SteeleによるWeb Authentication Adoptionコミュニティーグループの更新についてのビデオ(2021年10月、5分)をご覧ください。
W3C会員のYubicoとW3Cが共同でW3Cx(W3CのMOOC基盤)での最初のWeb Authenticationに関するオンライン開発者向け講義を立ち上げました。“Introduction to Web Authentication”というタイトルで、古いパスワードベースの認証をより強力な認証を含む安全なモデルに置き換えるための知識を得られます。
Web Application Securityワーキンググループでは、情報漏洩に関する概要と推奨される解決策を開設している新しいPost-Spectre Web DevelopmentのNOTEを公開しました。このグループでは新しい憲章を策定中です。
Privacy Interest Group (PING)が他のグループの仕様に対するプライバシーレビューを行っています。この活動は新しい追跡ツールを利用しており、各グループがプライバシーとフィンガープリンティング関連の仕様における問題に対して認識を持ってもらうことに成功しています。また、Target Privacy Threat Modelの文書を策定中です。
セキュリティーレビューはW3C Teamが運用するボランティアプールの方によって行われています。新規加入は歓迎です。課題追跡はPINGと同じツールで行われています。
国際化に関する教育コンテンツ一覧 • 仕様開発者向けチェックリスト • 多様な言語を利用可能にする活動の一覧 • 国際化イニシアティブ
世界人口のうち英語を話せる人は8億人程度ですが、オンライン情報の50%以上がいまだに英語だけのままです。ウェブで利用が困難な言語の利用者はますます軽んじられ締め出されていくことでしょう。ウェブによる経済的、教育的、また民主的な利点を享受できず、しかもその層の参加が得られないことでウェブの潜在的な可能性を世界全体まで伸ばせないことになります。
W3Cはウェブを真に'世界中の'ものにすべく、Internationalization Activity (i18n)を1998年に立ち上げました。全世界の利用者にとってウェブで様々な言語が利用できて本当に動作するようにするために、言語の専門家、ウェブサイトデザイナ、開発者、ベンダーといった活発にウェブを進化させる活動を行う人々の協力が必要です。全世界で利用されている言語がウェブで利用可能となったとき、全ての言語コミュニティをつなぐことができるようになるでしょう。
現在のプロジェクトの活動状況はレーダーで見ることができます。
国際化イニシアティブはW3Cの基礎的経費での活動範囲を超えた国際化領域での活動へのスポンサープログラムです。この追加の活動費により利用可能性を広げる重要な活動の拡大が実現されています。
時間・経験で貢献いただける場合、言語対応の活動、開発者サポート、ウェブ作成者サポート(教育&アウトリーチ)といったキーとなる領域へ是非ご参加ください。
言語・文字特有の要求についての文書と、既存・開発中の技術の中で利用する際の障害についての文書を策定中です。
現状のまとめについて、言語マトリクスやギャップ解析パイプラインをご覧ください。また、より詳細については言語対応の活動のページもあります。
W3Cグループ向けのレビュー、議論やアドバイスなどの活動(と時には外部のUnicode ConsoritumやIETFなどに対しても)と、各グループが自己確認や学習を行うためのガイドライン・チェックリストの準備、また特定の技術的問題について集中しての活動、などを行っています。
国際化ワーキンググループでは仕様のレビュー及びほかのワーキンググループへの助言の提供を継続しています。Review Radarにレビュー中・完了済の仕様が一覧され、Review Trackerにて追跡中もしくは議論中のissueが一覧できます。
製作者、仕様開発者、実装者に対し、国際化の機能を理解するのを助けるための文書を提供しています。講義への国際化の助言、ウェブページ制作者のための国際化チェッカーのメンテナンスもあります。
また、HTML & CSS Authoring Techniquesやほかの教育的な国際化技術の文書も参考にしてください。
WAIニュース • アクセシビリティの基礎 • デジタルアクセシビリティのビジネスケース • WAIの翻訳版 • WAIへの参加
1997年に設立されたW3CのWeb Accessibility Initiative (WAI)では、ウェブアクセシビリティへの適合と実装を推進するための技術標準に加えてアウトリーチと技術教育資料を作成しています。WAIのWeb Content Accessibility Guidelines (WCAG)はウェブアクセシビリティの権威ある指標的標準として扱われており、世界中のさまざまな政府から参照されています。
しかしながら、ウェブの複雑さが増し、デジタル出版や仮想環境がウェブに載るなどの技術の発展に伴い、それらの技術におけるアクセシビリティの実現が加速的に重要となってきました。WAIはW3 の全ての人のためのウェブのため、またアクセシビリティ関連の活動を協調したものとし、W3Cの活動領域全体に貢献しています。
ウェブ標準開発活動とウェブ開発者の間の緊密かつ効率的な相互フィードバックや幅広いコミュニティーからの参加者の獲得の推進活動を行っています。
W3CとedXの協働で2015年からコアなウェブ技術についてのMOOCsをW3Cxとして作成しています。
英語が基本であるW3Cの文書に対する翻訳版をたくさんのウェブユーザが参照しています。
コミュニティによる、特に仕様書に対して、さまざまな言語で無料で幅広い利用者に対して利用可能になるように公開している、継続的なこれらの貢献にW3Cは感謝します。
貢献するにはページから翻訳活動に参加する方法を見ることができます。
W3Cではインターネットやウェブ標準を開発している多数の組織や標準化団体(SDOs)とリエゾンと連携関係をウェブの開発における連携のために締結しています。
リエゾンと連携関係の目的は: